「こやんぴ」のぶらりお散歩ブログ

お散歩大好きの「こやんぴ」が、ふと出会った植物や動物たちについて思いつくままに記していきます。

セイヨウタンポポの繁殖力の秘密

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 セイヨウタンポポのお話です。

 昔の図鑑には、「セイヨウタンポポは、日本のタンポポが嫌う自花受粉を厭わないので繁殖力が強い」といった趣旨の記述があったので、私はずっとそれを信じて生きてきました。それがどうも違うようなのです。

 

 話の都合上、ここで横道に入ります。

 ほとんどが二倍体の動物とは違い、植物には三倍体、四倍体など二倍体を越えるものが普通に存在します。例えば、豪華な花をつける大型シンビジュームは四倍体ですし、秋の野原を彩るヒガンバナは三倍体です。

 三倍体から上の植物は、細胞も組織も株全体も二倍体のものより大きめになる傾向があります。確かに、二倍体のコヒガンバナよりも三倍体のヒガンバナの方が大きいですし、二倍体のシュンランに比べ大型シンビジュームはずっと大きいですよね。


 永遠の生命を持たない生物にとって、「種(しゅ)の保存、発展」を図ることは極めて重要です。ところが、三倍体のような奇数倍の植物は減数分裂が困難なので、種(たね)がまずできません。ヒガンバナがそうですし、種無しスイカもそう。種無しスイカは、三倍体のこの性質を利用して、四倍体の親と二倍体の親とを掛け合わせ人間が作り出したものです。

 

 さて、ここで問題です。日本在来のタンポポは二倍体ですが、セイヨウタンポポは何倍体なのでしょうか?


「あっ、私、花がこんもり盛り上がったセイヨウタンポポを見たことがあるよ。ということは、・・・わかった! 四倍体なんでしょ? う~ん、もしかしたら引っかけで、『残念でした。日本のタンポポと同じで二倍体なんですよ。考えすぎ~。』と言うつもりかもしれないので迷うな~。」


 え~とですね、実は二倍体でも四倍体でもないんです。驚くなかれ、三倍体。

「な~に訳の分からないことを言っているのさ。三倍体じゃあ、ヒガンバナや種無しスイカと同じように種ができないでしょ。『繁殖力抜群』とは矛盾するよ。おかしいじゃないか。」

 そうですよね。私も最初はそう思いましたよ。


 ところが、セイヨウタンポポには、減数分裂することなく、親株の遺伝子を三倍体のまま受け継ぐ種(たね)を仰山作る能力があるそうな。
「え~、そんな手、ありなんだ~!」

 ええ、蟻ではありませんが、ありなんです。


 しかも、タンポポの種(正確には痩果)は、綿毛に掴まり風に乗って遠くまで飛んでいけるのですから百人力。それに加えて、セイヨウタンポポは荒れ地も厭わぬ元気者なので万人力、どんどん増えていくことができるのです。

 広場一杯に広がるセイヨウタンポポの大群落は壮観です。綺麗です。見事なものです。カントウタンポポなど地元日本のタンポポたちには申し訳のない話ですが、そんなセイヨウタンポポのことを、日本の子供たちや子供の心を持ち続けている大人たちは大好きです。花の首飾りや冠を作ったり、綿毛に息を吹きかけて種飛ばしに興じたり。

 

 ですから、アメリカでも同じように春の人気者なのだろうな、そう思っていました。ところが、芝生大好きの彼の地の人々にとっては、丹精した芝生にズカズカと入り込んでくるセイヨウタンポポは邪魔者以外の何者でもないのでした。ノースカロライナのシャーロットのホームセンターで、タンポポ専用の除草剤が山積みになっていているのを見かけたことがあります。「にっくきタンポポ退治」のために、結構売れているようでした。


 日本に渡来したセイヨウタンポポは、環境省が「日本の侵略的外来種ワースト100」に選んでいるというのに、多くの人から愛されて幸せ者と言えるでしょう。