偶然続きの草津旅 その3(最終回)
草津温泉感謝祭
少年たちが扮する「白丁」の捧げ持つ松明に照らされて、温泉女神とお付きの巫女さんが、神社の狭い石段を慎重に降りてきます。
荘厳な雰囲気です。
湯畑の周りに集まった観光客の視線は、スポットライトには照らされているものの、まだまだ遠くて顔立ちがよく分からない温泉女神さまに釘付け。わくわくして湯畑の前に設けられた舞台への登場を待っています。
この荘厳なお祭りは、「草津温泉感謝祭」という名称で、草津の人たちに恵みをもたらす温泉に感謝するというもの。なんと、今年で74回目!
毎年、8月の1日と2日に開催されるそうです。
初日には、温泉女神が降臨し、草津の様々な源泉を汲み合わせ、それを数ある共同浴場の中の代表である「地蔵の湯」に分湯し、2日目には多くの共同浴場に分湯した後、再び天上に舞い戻るという壮大なストーリー。
私たち夫婦は、この祭りのことをまったく知らずに草津にやってきて、偶然初日のイベントを見学することができたのです。なんという幸運。
私たちは舞台の正面ではなく、左側に陣取って温泉女神一行のやって来るのを待つ体制。幸い、前の方の位置を確保することができたので、舞台上で展開される荘厳な儀式をしっかりと目にすることができそうです。
温泉女神、舞台へ
舞台右手に温泉女神一行がやってきました。今年の温泉女神さまは、長身でエキゾチックな顔立ちのお方のよう。
私の周りの女性たちが、
「うわぁ、素敵だわ~。」
とため息を漏らしています。
お付きの「白丁」さんたち、神社の階段に並んでいるのを遠くから見たときは、大人の人たちかと思っていたら、どうやら小学生が主体のよう。実に可愛らしい。
皆、恥ずかしがったりなどしておらず、堂々としています。
温泉女神さまと巫女さんが舞台上に勢ぞろい、正面を向きました。
巫女さんたちも、中学生くらいでしょうか。実に可愛らしいですね。
巫女さんから手渡されたシャクナゲの花を、温泉女神さまが感謝を込めて湯畑に投げ入れます。
私のすぐ前に、体のがっちりした「白丁」さんが一人いらしたため、舞台上の写真を撮る際に彼の厳つい肩が写ってしまいそうで苦労しました。
行事の展開する中で、彼の役割が分かりました。がっちりしているわけです。太鼓をドドンと敲く方だったのです。ちらっと「ちょっと邪魔だなぁ。」と思ってしまったことを悔いるこやんぴ。
舞台の奥で、湯畑から源泉が汲み上げられています。
白丁役の少年たちが、湯畑源泉や地蔵源泉、湯釜の湯などを持って舞台上に上がってきます。彼らの所作は実に堂々としていて、練習がさぞや大変だったろうことが想像できます。
源泉お汲み合わせの儀
いよいよ、白丁さんたちが持参した各種源泉を汲み合わせる儀式に移ります。
白丁から巫女へ、様々な源泉が手渡されました。
温泉女神さまが、それぞれの源泉に願いを込めているのでしょうか?
いよいよ、巫女さんたちの手で、それぞれの源泉が一つの桶に汲み合わされます。
巫女さん役の子どもたち、緊張しているだろうと思いますが、与えられた役割をきっちりと果たしています。
温泉女神さまが「お汲み合わせ」の仕上げにかかる前に、巫女さんが鈴を持って舞を披露、舞台を清めます。
祭りはクライマックスへ
いよいよ温泉女神さまによるお汲み合わせが始まります。
ゆっくりと、何度も、何度も、お汲み合わせが行われます。
お汲み合わせが終了すると、温泉女神さまは、高校生くらいの「白丁」さんたちの担ぐ輿に乗り、この後、地蔵の湯に向かい、お汲み合わせがされた湯を捧げることとなります。地蔵の湯での行事は、秘事として行われるため見学することはできません。
温泉女神さまの行列が地蔵の湯に向かって坂道を登っていくのを見送り、我々も宿に帰ることとしました。
(帰り道で、また道が分からなくなってしまった!)
8月2日のお祭りも見たいところでしたが、地元で行事があり、一日目の行事だけの見学となってしまいました。巫女さんや白丁さんたちが、はにかむこともなく、堂々とした所作で役割を果たしたことに大感激した私たち夫婦は、来年こそ、2日間ともお祭りを見学しようと固く決心したのでした。
今回の草津旅行は、思いもかけず大きなお祭りに出会えたこと、そのお祭りの主役を務めた方の宿に泊まったこと、地蔵の湯で出会った方がその宿で働いていたこと、などなど、偶然続きのとても素敵な旅となりました。