ユウゲショウ 儚げな名前なのに
「夕化粧」・・・なんと艶やかで儚げな名前なのでしょうか。源氏物語の「夕顔」のイメージ。
艶やかではあります。今では野生化していますが、明治時代に園芸植物としてアメリカ大陸から日本にやってきたお嬢様ですから、当然と言えば当然ですね。
マツヨイグサ属なので、色こそ違え、太宰治さんが「富士には月見草がよく似合う」と言ったマツヨイグサに花の形がよく似ています。マツヨイグサよりも秀峰にはお似合いかもしれません。それほど綺麗。
「夕化粧」というくらいですから、月見草のように夕方近くに咲きだすと思うでしょ? それがですねぇ、朝早くから開花し、夕方近くになるとさっさと萎んでしまうんですよ、この花。それなのに、どうして? 不思議です。
愛らしさを強調するためには、慌ただしく整える「朝化粧」や、なんとなく怪しげな「昼化粧」、退廃感が漂う「夜化粧」よりも、「夕化粧」がぴったりするんでしょうね、この花のイメージに。
ところが、この花の繁殖力には目を見張るものがあります。
当地では、ここ10年ほどの間に、田の畔にびっしりとユウゲショウが広がるようになりました。ピンクに染まった田の畦道・・・想像するだけでも「美しい!」とお思いになりますよね。
またまた、ところが、なのです。農家の方たちにとっては、田の畔が草ぼうぼうだと米作りに有害な虫たちの温床になってしまうのです。
そこで、ユウゲショウが、
「さあ、いっぱい花を咲かせようかなぁ。」
と夢見る頃に、除草剤が撒かれるという悲劇(ユウゲショウにとって)が起こるのです。
当然、ユウゲショウなどの「雑草」は大きなダメージを受けることになります。
かわいそう・・・と思いきや、多くの雑草がそのまま息をひそめてしまう中にあって、葉が赤く変色しても何とか踏みとどまるユウゲショウが結構多いのです。儚げな名前を頂戴したにもかかわらず、芯の強いお嬢様なのです。
時々、白花にも出会えます。