ムラサキケマンの悲しみ
ムラサキケマン(ケシ科キケマン属)。
キケマン属なので、春の妖精であるヤマエンゴサクとは同属。
花の形こそ似ているものの、ヤマエンゴサクほど愛されないのは気の毒な話。
なぜなのでしょう?
一つには、「儚さ」が不足しているという点があげられるかもしれません。ヤマエンゴサクの葉はとても小さく、触れれば消えて無くなってしまうようなか弱さを漂わせているのに対し、ムラサキケマンの葉は元気に生えあがり、いかにも丈夫そうです。野生児のよう、と言っても良いかもしれません。
そして、ヤマエンゴサクがあっという間に地上から消えてしまうのに対し、ムラサキケマンはかなり長く居座っています。日本人の大好きな「無常感」が徹底的に不足しているのです。
決定的なのは、繁殖力が抜群であること。ヤマエンゴサクほど環境を選ばず、荒れ地でも生きていくことができるので、どんどん子孫を増やしていきます。
ですから、どうしても、人間に「しぶとい雑草め!」と思われがち。
かくいう私も、家のあちこちにはえるムラサキケマンを引き抜く決心をすることがあります。かわいそうですが。
そうしないと、狭い庭中がムラサキケマンだらけになってしまうからです。
で、引っこ抜こうとすると・・・
ムラサキケマンは、驚いたことに、激しく抵抗するのです。
私の手や顔に矢継ぎ早のパンチ攻撃。パチパチパチ。
大量の種がはじけて跳ぶんですね。あまり痛くはありません。それでもびっくりします。豆をまかれて仰天する鬼になった気分。
(ヤマエンゴサクの種もはじけるます。でも、もっと優しくはじけるのではないでしょうか。当地では貴重な存在であるヤマエンゴサクを引っこ抜くなどありえませんので、推測するしかないのですが。)
そんなわけで、翌春、またまたムラサキケマンが家のあちこちに生えてきます。