フクラスズメの幼虫のブレイクダンス
フクラスズメは雀ではない
「ふくらすずめ」と書くと、冬の寒さから身を守るために雀が翅の内側に空気を蓄え、ころころとした姿になる「福良雀」のことだと思いますよね。ダウンジャケットを着こんで寒さに耐えているように見える雀たち・・・可愛らしい! 俳句でも冬の季語になっています。
でも、カタカナで「フクラスズメ」と書くと、なんと! 蛾の名前になってしまいます。「スズメ」と名乗っていても、ホバリングをすることで知られたあの「スズメガ」の仲間ではなく、「ヤガ(夜蛾)」の仲間。
私世代の男性には、「ミラージュ戦闘機みたいなやつ」というと伝わりやすいかも。
デルタ翼を持つミラージュ戦闘機に、雀の体の色と模様を模した塗色を施し、それを4センチメートルほどに縮小したら、フクラスズメ。
えっ、イメージできない? ぜんぜん伝わってこない?
そうかもしれませんね(オイオイ)。
ということで、どんな蛾なのかが知りたい方は、ネット検索をお願いいたします。
幼虫はケバくてやばい
さて、このフクラスズメの幼虫ですが、けばい奴です、ものすごくけばい。
オレンジ色の頭、黒くて細長い胴体、横腹には黄緑色のストライプが走り、毒針のような毛もそこかしこに生えています。
この毛虫、秋口に大量に発生します。ある場所のイラクサ科の植物を食べ尽くすと、次の「食堂」を求めて、道や庭に姿を現すことが。そうすると、その毒々しいイメージもあって、虫が苦手の方々が、保健所などに、
「毒虫がいっぱい出た~。何とかして!」
といった連絡をじゃんじゃん入れるとか。
そのため、専門家の間では、ウグイスの「春告げ鳥」に対し、この毛虫のことを「秋告げ虫」と呼んでいるらしい。我々は、青くて高い空を見上げて秋を感じますよね。実に清々しい。ところが、昆虫の専門家は、フクラスズメの幼虫に対する問い合わせ、苦情、駆除依頼などが増えるようになると、
「ああ、秋になったなぁ。」
としみじみ思うのだそうです。ちょっと気の毒ですね。
警戒色の衣装を纏いカラムシを食す
いつものように話が脱線し、あらぬ方向に走りはじめておりました。
「毒虫」から横道にそれていたことに、毒つながりの「気の毒」で気がつきました。
さて、この毛虫、いかにも毒を持っていて、人間に害を与えそうなのですが、実は無害です。毒など持っておらず、色や形態で、
「おらぁ、毒なんだぜぇ。触ったり、食おうとしたりしたら、大変だぜぇ。」
と、相手を警戒させているだけ。
フクラスズメの幼虫の食草は、イラクサ科の植物です。
下の写真の幼虫は、カラムシの葉を食事中。
「カラムシ」と聞いて、「あっ、日本史の授業で聞いたことがある!」と叫ばれたそこのあなた、大学受験の際の選択科目は日本史だったのではないでしょうか? 実は私も、カタカナ名前の溢れる地理や世界史にはどうしても馴染むことができず、日本史を選択したのでした。
カラムシの名は、江戸時代の各地の特産物の中で出てきたような・・・。もはや、うろ覚えです。
この草からは、苧麻(ラミー)という繊維を採ることができるのです。「まお」、「からそ」とも呼ばれ、越後上布、小千谷縮などの原料です。
フクラスズメのダンスをご覧あれ
さて、この幼虫、警戒色を身に纏っていますが、それでも、「俺は騙されないぞ」という天敵はやってまいります。
その時にとるフクラスズメの幼虫の行動が実に面白い。
なんと、首振りダンスを踊るのです。一生懸命に。
本人たちは、生きるために必死なのでしょうが、ちょっと笑っちゃいます。