ナツズイセンは明日開花しそう
昨日は、「モモスズメ隠し」程度にしかご紹介できなかったナツズイセン。
我が家のナツズイセンは、間違えてやってきた球根の子孫なのです。
私が二十歳のころ、ほんの短期間ですが、春先に、電話工事のお手伝いをしたことがあります。こやんぴのような不器用者が、電信柱をまっすぐに建てる仕事や、建てたばかりの電信柱に登って電話線をつなぐ作業をしたのです。ほんのお手伝いとは言え、信じられないことではあります。
今でも、私がかかわった電信柱が傾いてしまったのではないか、繋いだ電話線の影響で混線が生じたのではないか、などと心配になります。
電信柱を建てる穴は、「建柱車」という車の大きなドリルで穿ちます。
ある時、穴が見事に開いたところで大休止、お昼を食べることとなりました。弁当箱を開け、食事に箸を付けようとしたところ、何個かの球根が穴の近くに転がっているのが目に入りました。ドリルで掘り出された土の中から出てきたのに違いありません。球根にはすでに深緑色の葉が出始めていました。
「水仙の球根が掘り出されちゃったんだな。このまま放置しておいたら、間違いなく枯れてしまう。家に持ち帰って植えておこうかな。」
そう思った私は、「水仙」を2球、ポケットにしまいました。
家に帰り、庭に植え、花が咲くのを楽しみに待っていました。
期待にたがわず、球根はぐんぐんと成長し、幅広で長い葉を繁らせました。
「葉っぱがこんなに元気だということは、かなり立派な花を咲かせる水仙に違いない。」
私は、わくわくして「その日」を待っていたものです。
ところが、とっても元気だったのは5月まで。梅雨に入る頃には葉が茶色に変色し、完全に枯れてしまいました。やはり、一度ドリルで掘り出された経験が、水仙に大きなダメージを与えてしまったのでしょう。気の毒なことをしたものです。
薄情にも、巨大水仙のことを忘れかけた夏休み。
巨大水仙が生えていたところから、花茎だけがにょっきりと立ち上がってきたものですから、もうびっくり仰天。
咲いた花を見て、もっとびっくり。
巨大水仙と思い込んでいた球根は、ヒガンバナの親戚筋のナツズイセンだったからです。
(ちなみに、水仙もヒガンバナ科です。葉の形が似ていて当たり前だったわけ。)
ヒガンバナは秋の花ですが、同じヒガンバナ科でもナツズイセンやキツネノカミソリは真夏の花。特にナツズイセンは、薄桃色に薄青色の混じった微妙な色合いの花弁が実に涼やか。大柄の花は見ごたえもあります。山野に咲いているのを見たことはありましたが、まさか、こんな形で我が家にやって来るとは。
実家は、とてもつらい事情により、今はありません。でも、実家から我が家に移植したナツズイセンが今でも元気なのはうれしい限りです。だって、ナツズイセンは、生まれてから結婚するまで過ごした実家を偲ぶことのできる数少ない縁(よすが)の一つなのですから。
今年はたくさん花茎が立ち上がっています。
花盛りの予感。
多分、明日、最初の花が咲くことでしょう。