陸奥のしのぶもぢずり
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに
この歌の中の「もぢずり」は布のことで、ネジバナの別称である「モジズリ」を意味するものではありません。けれど、江戸時代の粋人たちは、この花を「捩摺(モヂズリ)と呼ぶことを好んだようです。恋に身を捩るようにねじれて咲く花、ということなのでしょうか。
恋の歌に含まれる言葉と同じ別称を持つとは、ネジバナもなかなかやるものです。
一見、皆同じように見えるネジバナですが、ねじれ方は、右巻きあり、左巻きあり。
上の2株は左巻きですね。
ところが、下の個体は右巻き。
右巻きと左巻きの出現率は、ほぼ半々とのこと。
ちなみに私の頭のつむじは左巻き。
髪の毛を伸ばしていると分かりにくい右巻き、左巻きですが、坊主頭にしていると一目瞭然。
こやんぴが通った中学校は、なぜか知りませんが、男子生徒は全員坊主頭にしなければなりませんでした。
坊主頭が大嫌いだった私は、小学校を卒業する際、私と同様に「坊主頭なんか嫌だ」派の何人かと「富士見中学校に髪を伸ばしたまま登校する坊っちゃん同盟」を結成しました。そして、バリカン片手の鬼教師に脅かされようが、親が「そこは、それ、穏便に、ね。ね。」と懇願しようが、絶対に床屋でバリカンの餌食にはならない、そう約束しあったのです。
数日が過ぎ、同盟メンバーの一人がくりんくりんの坊主頭に変身。
「なんだよ、あいつ!」
と一番怒っていたメンバーが数日後に丸坊主。
こうなると、あの強固と信じていた同盟の崩壊速度は、斜度60度の急傾斜を転がり落ちるボールさながら。
とうとう、こやんぴ一人で砦を死守している状況に追い込まれてしまいました。
「お~、こやんぴ、すごいぞ。たった一人で理不尽な学校の決まりに立ち向かったんだね。尊敬しちゃうなぁ。」
いやぁ、照れるな、どうも。
結論から言うと、こやんぴも周辺の圧力に屈し、始業式の前日、近所の床屋さんに、
「あれぇ、こやんぴ君、坊主頭にしないって言ってたのは、入学式前日までのことだったんだ。へええ。」
と言われつつ、断髪式を挙行したのであります。根性なしです。へたれです。
坊っちゃんこやんぴも、ついに坊主頭。そうしたら、あれ、意外に可愛い!
(これこれ)
坊主頭にすると、つむじがよく目立つんですよね。
それで、悪童たちが私の後頭部を覗き込み、「あっ、こやんぴのつむじ、左巻きでやんの! や~い、こやんぴ、アホ~、左巻き~。」とからかったものでした。
こやんぴ、実際のところはどうであれ、自分ではアホとは思っていなかったので、まったく気にしませんでしたが、「左巻きは少数派なのかな? 珍しいのかな?」とは思っていました。
ところが、日本人の右巻きと左巻きの出現率は、ネジバナ同様、ほぼ半分らしいですね。知らなかったなぁ。
なぁんだ、私のことをからかった悪童たちの半分も、実は左巻きだったんだ。
あれれ? 「ネジバナ同様」?
ああそうでした。「左巻き」から話の「本線」を離れ、私の「つむじ支線」に乗り入れて彷徨ってしまいました。失礼いたしました。
ポイントを切り替え、「ネジバナ本線」に戻ることといたします。
上に紹介した2つの写真の花は、あまり大きく花弁を開きませんが、下の写真のように、大きく花弁を開くタイプもあります。とても気品がありますね。
私の無駄話に両手を開き、「オー、ノー!」と言っているのかも。
色も、薄いものから、下の写真のように濃いものまで。
色の濃いものは、小さいけれど、まるでカトレア。
純白のものもあります。今日探した中にはありませんでしたが、下の個体は、純白ではないものの、色がかなり薄そうです。
下の写真のように、ほとんどねじるのを忘れてしまったような個体もあります。
ネジバナと戯れるのは、実に楽しい!
虫には刺されますけれど。