甌穴(おうけつ)のこと
甌穴(おうけつ)? なんじゃそれ?
ごもっともです。そもそも、「甌」の字なんて、書けませんし、読めません。
でも、四万温泉に車で行ったことのある方なら、寄る寄らないは別にして、
「甌穴入口」
の看板を見かけたことがあるのではないでしょうか。
埼玉県の長瀞で甌穴を見慣れているこやんぴは、「甌穴入口」の看板を見ても、
「ふぅん、ここにもあるんだ。へぇ、そうなんだ。」
と思うだけで、いつも通り過ぎていました。
ところが、今日、甌穴に関するブログを書いてみようかな、そう思ってネット検索をしたところ、ここの甌穴は、見て損のないものだったことが分かりました。穴そのものがかなり大きいし、きれいな川の流れの中にあるために、水の色がそこで微妙に変化するので、かなり美しいようです。
これはしまった、しくじった。
今度、四万温泉に出かける際には、寄らなければなりますまい。
この甌穴を紹介する下のサイトには、甌穴のでき方が丁寧に解説されているので、とても参考になります。
先日、長瀞で甌穴に出会い、思い出したのは、私が40代の頃に関わった冊子のこと。
《 岩畳上の小さな甌穴。 》
あるセクションに異動したところ、構想自体は気宇壮大ではあるものの、「一体何をどうしたらよいのか見当もつかず、五里霧中もいいところ」という冊子作りの仕事が待っていました。大風呂敷を広げたのはいいけれど、包むべき中味は決まっていない・・・うそじゃんかよぉ。
後から聞いた話ですが、前からその組織に所属していた同僚たちは、
「そんな訳のわからないもの、担当させられたらかなわねぇ。俺たちゃぁ、知~らないっと。新しく来た奴の担当にしちゃおうぜ。お手並み拝見だぁ。」
と決めていたようです。ひどい話ではありませんか。
「さて、どうしたものだろうか・・・」
困惑したものの、「何をしようとあんたの自由」なんて仕事、そうそうあるものではありません。試行錯誤しつつも、嬉々として構想を温めていきました。「構想」なんて言うと何となく高尚なようですが、私には、結局のところ、良く言えば斬新、普通に言えば奇想天外、悪く言えばおちゃらけの「こやんぴ流」しかございません。
石部金吉の上司が、
「なんじゃこれ」
というものを作り始めたので、最初は、傍観者を決め込んでいた同僚たちも、
「なんだ、こいつは。変てこりんだけれど、面白れぇ奴だなぁ。」
と思い始めたようで、少しずつ、そして最後にはノリノリで、協力してくれました。
くそまじめな上司は、
「おいおい、何作っているんだよぉ。」
と、はらはらどきどきだったようですが、外部の名のある先生たちが、けらけら笑いながらも、こやんぴ流を評価してくださいました。
小心者の上司は、もっと上の、やっぱり石部金吉の幹部から叱られたくはないので、本当はストップを掛けたかったことでしょう。でも、上司も、その上の上司も、外部の権威者にはめっぽう弱かったのです。
おかげさまで、私は、思い通りの仕事を完成させることができました。なかなか、このように自由な仕事はあるものではありません。ものすごく幸せな経験でした。
そういった思い出いっぱいの冊子の初めの方に長瀞のことが出てきます。
物語の展開とは直接かかわらないのですが、長瀞の甌穴についても解説しておきたかったので、囲み記事風に4コマ漫画を作成したのです(原案こやんぴ。作画は若いイラストレーター。)。ですから、つい先日、小さな甌穴を長瀞で見かけただけでも、条件反射でうれしくなってしまったのです。
ちなみに、「作 ケンちゃん」とありますが、「ケンちゃん」とは、この冊子の主人公の名前であって、私の名前ではありません。さらに言うと、くそまじめ上司の名前が「ケンちゃん」。上司を主人公の子どもにしてしまうなんて、こやんぴ流もいいところです。