季節外れのシキミの花
地元の元不動尊に生えているシキミ(当地域では「シキビ」と言います。)が、季節外れの花を咲かせています。
シキミの本来の花の時期は春なのに、なぜ、この時期に開花したのでしょうか?
最近の上がったり下がったりの気温に「純真な」シキミが騙されたのか、この気候が花を咲かせるのに願ったり叶ったりだったのか・・・首を捻るばかりです。
私が子供の頃は盆踊り会場だった元不動尊は、ある日、忽然とこの世から消え去りました。突然お寺が無くなってしまったのですから、「村中」が大騒ぎになったはずですよね。事実、「村人」たちには大事件だったようなのですが、なんと、私はまったく覚えておりません。父からも母からも、この件について何も聞いていないのです。
若い頃の私は、江戸時代からずっと世帯数が変わらず(今は、当時の9倍くらいの世帯数となっていますが。)、常にお互いの家をじろじろ観察しているような息苦しい「田舎」が好きではありませんでした。「早く出ていきたい」としか考えていなかったので、地元のことに関心などありませんでした。ですから、もしかすると、結婚して千葉県市川市に転居するまでの間に起こった事件だったかもしれません。
でも、「村中」がてんやわんやになるような話なのですから、地元にいれば、いくら地元のことに無関心だったとしても、父や母から少しは話を聞かされたはず。とんと覚えがないということは、私がこの地を離れている間の出来事だったのでしょうか。よく分かりません。
故郷に舞い戻った後、地元にずっと住んでいる人から、その「真相」なるものを面白おかしく聞かされたことはありますが、その「伝説」が本当のことなのかどうなのかも不明です。
ちょっとしたミステリー小説が書けそうです。
いずれにしても、突然消えてしまったことだけは確かな不動尊ですが、その縁(よすが)として、石碑が数基と、いかにもお寺らしい樹木であるサルスベリ、イチョウ、そしてこのシキミが残っているのです。
廃寺になる前から生育しているこれらの木こそ、事件の真相を知っているに違いないのですが、残念なことに、私はサルスベリ語もイチョウ語も、そしてシキミ語も解さないので、彼ら、彼女らから真相を聞き出すことができません。
シキミの花の横には、春に咲いた花が実となり、熟しつつあります。
中華料理で使う八角に似ていると思いませんか?
それもそのはず、八角はシキミの近縁種であるトウシキミの実なのです。とても近い親戚筋なので、似ているわけです。
ということは、シキミの実をトウシキミの実である八角と同じように、中華料理に使えるのか?
ところが、そうではないようです。
なんと、シキミの実は毒。
しかも、その毒ときたら半端ではありません。そんじょそこらの毒など足元にも及ばない猛毒。日本に生育する植物中、このシキミの実だけが「劇物」に指定されているのだそうです。いやぁ、知らなかったなぁ。
八角の代わりに使用しようものなら、死に至る可能性があるとのことです。恐ろしいですね。
旧不動尊が廃寺となった経緯をあれこれ詮索することも、もしかしたら、
「劇毒を浴びることになのだよ。」
と、シキミが警告しているのかもしれません。おおこわ。