「こやんぴ」のぶらりお散歩ブログ

お散歩大好きの「こやんぴ」が、ふと出会った植物や動物たちについて思いつくままに記していきます。

ネナシカズラ その後

まるで、黄色いネット

 

「誰だ、こんな所に黄色いネットを棄てたのは?」

ネナシカズラ」を最初に見かけたとき、私は、そう叫びました。

 

ネナシカズラ」と記しましたが、花の形状から、どうも、外来植物である「アメリネナシカズラ」のようです。


f:id:koro111koyampi:20180817144232j:image

 《 セイタカアワダチソウが、網を掛けられた罪人のような哀れな姿に。 》

 

 前回は、ネナシカズラ(実は、アメリネナシカズラ)の説明が短かめでした。

 今回は、新しい写真を撮ってきたことでもあり、そして、自分なりの新発見があったことでもあり、もう少し詳しく記してみたいと考えています。

 

 アメリネナシカズラは、その名のとおり、根を持ちません。自分では炭酸同化作用をすることをほとんどやめてしまったので、葉もないに等しい状況です。

 芽ばえの時こそ根はあるものの、寄主植物(寄生されてしまう植物のこと。)に取りつき、その維管束にブスッと仮根を差し込むと、栄養補給体制が完備され、自分の根は無用の長物と化します。

 移動の自由を制約するだけの存在となった自分の根などさっさと切り捨て、寄主植物に寄りかかりつつ、あてどのない根無し草生活に移行します。



f:id:koro111koyampi:20180818082533j:image

《 オオニシキソウにも巻き付いています。オオニシキソウ、苦しさのあまり、秋でもないのに、もう葉を錦に染めています。 》


f:id:koro111koyampi:20180818082602j:image
《 オギも寄主植物になってしまったようです。何でもありなのでしょうか? 》

 

 

非情なる風来坊

 

 同じ「根無し草」でも、フーテンの寅さんには香具師という仕事があり自立していますが、アメリネナシカズラは、寄主植物から水分と栄養物をネコババしながら、安楽生活を享受するのみ。

 

 当地では、セイタカアワダチソウコセンダングサヒメジョオンヨモギなどをぐるぐる巻きにして、その栄養をチューチュー吸い取っています。それが何より証拠には、アメリネナシカズラに取りつかれていない同種の植物に比べ、取りつかれた植物の生育は明らかに不十分なのです。

 せっかく根から吸い上げた水分と、炭酸同化作用で稼ぎ出した栄養分を持っていかれるわけで、寄主植物たちは身も細る思いです。とんだ迷惑。

 

 寄主植物がチューチュー過多により枯れて倒れてしまったら、アメリネナシカズラもこけてしまい、元も子もなくなってしまうかも。

 それでは困ります。

 

 では、アメリネナシカズラは次のように考えているでしょうか?

 

 そうだ! 徳川時代のお武家さまは、お百姓さんたちを絞り上げるに当たっても、「生かさず殺さず」を心がけたそうな。俺たちも、それを心がけてチューチューしようぜ!

 

 いいえ、アメリネナシカズラは、寄主植物の身の上のことなど、これっぽっちも考えておりません。アメリカのことしか考えず、他の国のことはどうでもよいトランプさんや、水戸黄門にお仕置きされる悪代官さんも裸足で逃げ出す非情さ。

 蔓でどこにでも移動できるのですから、没落し貧乏所帯となった寄主植物を、あんなにお世話になった宿主を、「金の切れ目が縁の切れ目」とばかりポイと見捨ててしまい、新たなパトロンに絡みついていくのです。弱った日本の企業を買いたたくアメリカや中国のハゲタカ資本みたいでもあります。

 

 

よそ様のお陰で子沢山

 

 図々しさは、他の面にも見てとれます。根も葉もない、それこそ嘘のような存在であるのにも拘らず、居候であるにも拘らず、3杯目をそっと出したりしないのです。

「おかわり」、「おかわり」と叫ぶがごとく、実に堂々とお茶碗ならぬ「花」を指し出すのです。白い小さな花をびっしりと咲かせるのです。当然、実も、たわわ。

 

f:id:koro111koyampi:20180818134509j:plain

f:id:koro111koyampi:20180818170743j:plain

《 四つ並んだ花のうち、雄蕊の目立つ一番奥の花が最盛期。時計回りに実に向けた準備が進んでいるようです。 》

 

f:id:koro111koyampi:20180818172122j:plain

《 受粉のお手伝いをするのはコバチや小さなハナアブかも。 『源氏物語』では、光源氏の乳母子である藤原惟光の役所(やくどころ)に当たります・・・ ちょっとニュアンスが違うかな? 》


f:id:koro111koyampi:20180818082829j:image
《 ここでは、もう、ほとんどの花が実に変わりつつあります。 》

 

「根も葉もないくせに」と申し上げましたが、衣食住すべて「ただ」だからこそ、花を咲かせ実を結ぶことに全力を傾けることができる、と言った方が正解かもしれません。

 

 まるで源氏物語に登場する上層貴族。

 実際の上流貴族は、生産的とは言えないにしろ、儀式や会議などで結構忙しかったようですが、源氏物語の世界では、光源氏をはじめとする貴公子が家計のやりくりに悩んでいる様子も、仕事に忙殺されている気配も皆無。

 

 色恋沙汰に熱中するとともに、自分の地位をどう守るか、子孫たちの安泰な生活をどう確保するかに全力を傾けています。

 彼らが目指すのは、あっちこっちのやんごとなき家柄の娘のもとにせっせと通い、姫君をもうけ、その姫君を賢く育てて後宮に入れること。その姫君が皇子を生み、その子が天皇の地位に就いて、自らは外戚として権勢をふるうのが最終目標。

 

 ネナシカズラにも、たくさんの姫君が育ちつつあります。

 
f:id:koro111koyampi:20180818082945j:image

 《 実(まだ未成熟)がびっしりですね。 》

 

あらら、自分も寄主植物に・・・

 

 こんな傍若無人極まりないネナシカズラですが、因果応報と申しましょうか、なんと、自分も「寄主植物」になってしまうのですから世の中はおもしろい。

 

 これが、ネナシカズラに居候する生物。

 

f:id:koro111koyampi:20180818134947j:plain

f:id:koro111koyampi:20180818135057j:plain

 

「えっ? これ、実でしょ?」

 

 確かに、実に見えますよね。

 でも、花の付き方を見れば分かるとおり、実であるならば、花と同様にびっしりと密集しているはず。そもそも、先に見た実(未成熟)とは似ても似つきません。

 

「ムカゴ?」

 

 でもありません。実は、この膨らみは、ネナシカズラコブフシという名の虫瘤(虫えい)。虫の名前ではなく、虫瘤の名前です。

 

 ネナシカズラコブフシの中には、マダラケシツブゾウムシという甲虫の幼虫か蛹が入っています。名前の一部に「芥子粒」とあるとおり、小さな小さなゾウムシです。

 

 よくみると、ネナシカズラコブフシが多くあることから、アメリネナシカズラも良いことずくめではなく、マダラケシツブゾウムシに栄養を吸い取られ、「楽あれば苦あり」というところでしょうか?

 

 ちなみに、「親亀の背中に子亀を乗せる」かのように、今度は、カメムシの仲間がネナシカズラコブフシを齧るようですし、マダラケシツブゾウムシの幼虫に寄生する蜂もいるようなので、いやぁ、生物界は複雑怪奇ですねぇ。

 

f:id:koro111koyampi:20180818141713j:plain