「こやんぴ」のぶらりお散歩ブログ

お散歩大好きの「こやんぴ」が、ふと出会った植物や動物たちについて思いつくままに記していきます。

アオスジアゲハの蛹がすごい

虫めづる姫君

 

 高校生時代、参考書で、『堤中納言物語』の『虫めづる姫君』を興味深く読みました。私も、昆虫好きでしたから。

 

 久しぶりに、読み直してみました。

 

 毛虫が大好きで、飼育までしていたのですから、平安時代のお姫様としては、かなりの変わり者。

 

 でも、「普通のお姫様」になってほしいと意見する親に対し、

「よろづのことどもをたづねて、末を見ればこそ、事はゆゑあれ。・・・烏毛虫の、蝶とはなるなり。」

と、はっきりと意見を述べています。

「すべての事象を探求して、結果をしっかりと観察するからこそ、物事の面白さが理解できるのです。・・・毛虫が蝶に変身するのですよ。」、そんな意味ですね。

 

 さらに、

「きぬとて、人々の着るも、蚕のまだ羽つかぬにし出だし・・・」

と述べています。

「(上等な)絹だと言って、人々が(誇らしげに)着るその絹だって、蚕がまだ羽のつかないうちに作り出して・・・」

と論理的に主張されては、親も「ギャフン」です。

 

 姫君も、現代に生まれていれば、昆虫学の名教授になったかもしれません。生まれるのが早すぎたのかも。

 

 

アオスジアゲハの変わり者

 その1 サイクリング大好きさん

 

 昨日のブログに、保護色が活用できるクスノキの樹上ではなく、わざわざ、自転車のクランクや牛乳の宅配ボックスに移動し、そこで蛹になった変わり者がいた、と記しました。

 

 まずは、クランクに貼りついた蛹をご紹介します。マウンテンバイクの手入れが不十分で、錆や埃が目立ち、見苦しいのはお許しいただいて・・・


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 どうです? ものすごいところで蛹になったと思いませんか?

 

 加賀千代女(かがのちよじょ)は、井戸の釣瓶に朝顔が巻き付いてしまった際に、それを風流と感じ、朝顔には、そのまま花を咲かせてもらう選択をしました。自らは、他家から貰い水をするという不便を敢えてしてまでも。

   朝顔につるべ取られてもらい水 加賀千代女

 

 こやんぴジッジョは、「ありゃまあ」とは思いつつも、

   青筋にクランク取られ借りバイク こやんぴジッジョ

などと、無季の俳句もどきを詠み、借りバイクをするまでの風流人ではありません。

 かと言って、クランクで蛹になったアオスジアゲハに対し、青筋を立てて怒るような野暮天でもないつもり。

 

 クランクが高速で回転しても、蛹が自転車の他の部位にぶつかることのないことを確認の上、

「蛹ちゃん、一緒にサイクリングしようね。」

と声をかけて、アオスジアゲハの蛹ちゃんとのツーリングを楽しんだのでした。

 

 ところで、蛾や蝶は、蛹の中で、芋虫や毛虫の姿から少しずつ成虫に変化していくと思っていませんか? 私も、かつてはそう思っていました。

 

 実は、蛹の中で、一度、ほとんどの部位がどろどろの液体になって、成虫の姿を一から作り直しているのです。神秘的ですね。

 

 そのようなわけで、クランクに貼りついた蛹は、蛹の中をシャッフルされ続けて大変だったかもしれません。

 

 そんな過酷な環境下にも関わらず、緑色だった外見がだんだん茶色に変身していき、いつのまにか成蝶になって飛び立っていきました。

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アオスジアゲハの変わり者
 その2 牛乳大好きさん

 マイバイクの蛹ちゃんに一足遅れ、クスノキからはかなり離れた牛乳の宅配ボックスまで這って行き、蛹になった「ミルクめづる姫君」の写真がこれ。

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 宅配ボックスにたどり着くまでは、危険が一杯。

 よくもまあ、鳥や蜂に見つからなかったものです。

 

 当時、牛乳配達をされていた方は、若いお母さんでした。赤ちゃんを助手席に乗せて配達に来てくれていたのです。

 きっと、

「このお宅は、どうしてこんな気持ち悪いものが付いたままにしているのかしら?」

と思っていらしたことでしょう。

 

 成蝶になるかどうか気になっていましたが、脱皮の兆候が見られない段階でイギリス旅行に出掛ける日が近づいてきました。

 まさか、妻に、

「蛹ちゃんが成蝶になるのを確認するから、僕は行かないよ。」

と言う訳にもいかず、私は泣く泣くイギリスに旅立ったのでした(ほんまかいな?)。

 

 帰国して宅配ボックスに駆け寄る(かなり「もって」おります。)と、

「おぉ!」

 無事、成蝶になったようで、蛹は空になっていました。

 よかった、よかった。

 

 

驚くべき蛹の構造

 

 アオスジアゲハの蛹をよく見てみましょう。


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 まるで葉っぱですよね。色もそうですが、ちゃんと葉脈まで模倣しています。これなら、十分保護色としての機能を発揮します。クスノキの樹上で蛹になれば・・・

 何が悲しゅうて、こんな目立つ所で蛹になったものやら。

 

 実は、もっと驚異的な点があるのです。拡大しないと分かりにくいかな?

 拡大する前に、ヒントを。

 体を宅配ボックスに括りつけている「命綱」。

 

 私は、拡大して見るまで、蛹の背中にぐるりと「命綱」を回しただけで、ボックスにしがみついているのかと思っていたのですが・・・

 

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  目を凝らして、よ~くご覧ください。

 観察ポイントは、「葉脈」と「命綱」の交差部分。

 

 もう少し拡大して見ますね。

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 あっと驚く芸当ではありませんか?

 なんと、「命綱」を葉脈の下に編み込んでいるんですよ。すごい、すごすぎる! どうやって糸を通したのでしょうか?

 

 空(から)の蛹を宅配ボックスから 剥がしてみたら、もっとびっくり。

 

 ボックスにお尻の部分と「命綱」の両端の三点支持により、ちょこんとくっ付いていたのではありませんでした。

 

 ボックスに真綿状のシートを粘着させ、そこに、お尻の部分と「命綱」をかっちりとジョイントさせていたのです。完璧の職人技ではありませんか。


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 自転車のクランクが高速回転しても振り落とされないわけです。

 

 蛹になるところを確認したくなりました。