「こやんぴ」のぶらりお散歩ブログ

お散歩大好きの「こやんぴ」が、ふと出会った植物や動物たちについて思いつくままに記していきます。

高校時代のこと その1 ことほど左様に

 私の高校時代・・・ずっとずっと昔の話です。

 

 日本史のS先生は、ご高齢で、おそらく定年退職した後の講師の立場だったと記憶しています。

 我がクラスは、今ではさほど珍しいことではないと思いますが、兄弟姉妹がたくさんいるのが当たり前の時代に、全員が長男坊。

 担任のN先生が、「素直なよい子が多いのはよいけれど、どうもおとなしくて覇気が今一つだなあ。」と嘆くほど、のほほんとした惣領の甚六の集まりでした。

 

 N先生が「よい子が『多い』」と仰ったように、全員が「よい子」ではありませんでした。こやんぴなど一部の例外がいたからです。ご苦労をおかけしました、N先生。

 

 さて、S先生は、ご高齢のため、職員室から渡り廊下を渡って私たちのクラスにやってくる前に、どうしてもトイレに寄らざるを得なかったようです。始業ベルが鳴っても、先生がトイレから出てくるまで授業が始まりませんので、トイレ偵察要員から合図があるまで、皆思い思いのことができたのは、さて、幸せだったのかどうか。

 

 1学期の中間テストで、S先生は、授業ではまったく触れなかった「珍問・奇問」を出されました。クラス一同、絶句。

 大和豪族の氏が漢字で書いてあり、その「読みを答えよ」という問題。

 「葛城(かつらぎ)」は、ほとんどの生徒が正解、「平群(へぐり)」の正解はほんの一部、「和珥」・・・これは全員玉砕でした。

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 答案回収と同時に、クラス内で、

「『わおうみみ』って何なんだ?」

「『わおうみみ』じゃあないと思うが、読めない、まったく分からない。」

「授業で触れないところを出すなんて、S先生、意地悪だなあ。」

と大騒ぎ。

 

 教科書を開いて見ると、確かに、大和の豪族の名前と勢力範囲を示す図が載っています。

 「聞いてないよぉ。」、「授業でやった所から出せよなぁ。」

という不満の声も一部の「notよい子」から漏れ出たところですが、そこは「ほとんどよい子」の団体なものですから、

「S先生を責めるのはおかしい。勉強をしなかった僕たちが悪い。」

という優等生的結論となりました。

 

 これにより、我がクラス全員が、「和珥氏」を「わにうじ」と正確に読めるようになりました。入試問題に「ずばり出た」という話は聞いていないので、少なくとも大学受験の役には立たなかったのですが。

 

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 その後の期末試験、中間試験対策として、クラスのほぼ全員が、日本史の教科書の図や表まで舐めるように勉強したため、我がクラスには日本史大好き人間が多数出現したのですから、今から考えると、S先生ってすごかったんですね。

 

 さて、そのS先生、一度だけ、我がよい子ちゃんクラスの授業で、大滑りを仕出かしてしまいました。

 

 江戸時代の、おそらく「宗門改め」あたりの授業だったと思います。

 今では、そのような発問をすることは、ちょっと問題があるかもしれませんが、S先生、やおら、

「自分の家は何宗か答えよ。」

と仰り、次から次へと生徒に答えさせたのです。

 

 多分、他のクラスでは、

「分かりません。」

「知りません。」

という答えが続出したのでしょう。これが先生の狙いだったようです。

 

 ところが我がクラスは、惣領のぼんぼんばかりです。長男には家を継いでもらいたい親が多かったらしく、家の宗派について親からしっかり伝えられている者がほとんどでした。

 先生が指す生徒は、実に滑らかに、

曹洞宗です。」

「うちは浄土宗です。」

真言宗智山派です。」

「私の家は寺院です。浄土宗のお寺です。」

と答え続けるではありませんか。

 先生の気に入る答えをしようと、一生懸命になる生徒たち。

 ああそれなのに、S先生の顔には困惑の表情が。なぜ?

 

 やっと、十数番目にあてられた生徒が、

「分かりません。」

と、申し訳なさそうに答えました。

 

 そうしたら、S先生、なんて仰ったと思いますか。

 

 驚くべし。なんと、

「ことほど左様に、家の宗派を知らない者が多いのである。」

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 クラス一同、呆然。

 まさか、「知りません。」、「分かりません。」が先生の求める答えだったとは誰も気付かなかったからです。

 それにしても、「ことほど左様に」はないですよねぇ。

 

 よどみなく家のお寺の宗派を答えた生徒の中に、こやんぴも入っておりました。しかも、指名された順番は、かなり早い方だったはず。

 

 今だから白状しますが、こやんぴ、実は、家の宗派を知りませんでした。なのに、図々しさだけは百人前だったので、思いつくままに「浄土真宗です。」と答えたのです。実際は天台宗だったのに。いい加減なものです。

 そういうわけで、今でも、

「なんかS先生に悪いことしちゃったなぁ。」

と思っているこやんぴなのでした。