鵜が意地悪なのか、それとも鷺が・・・?
河川敷を散歩していると、前から歩いてきた上品な女性が、
「たいへんです。白鷺が鵜に苛められているの。」
と訴えてきたことがあります。
彼女が指差す先を見ると、川の中にたくさんのカワウとコサギが群れています。確かに、カワウが川の中間地点を我が物顔に動き回っていて、コサギの方はカワウに意地悪をされて川岸に追いやられているようにみえます。
コサギが「悪者」カワウに追い払われ、飛んで逃げている???
黒装束のカワウが何となく悪漢のようにみえるのに対し、優美な白いドレスを着たコサギはおしとやかなお嬢様のよう。どうみても、カワウの方が分が悪い・・・
そのようなわけで、この女性が「正義の味方のコサギが悪役のカワウから折檻を受けている」と思ったのも無理はありません。
はたして、カワウ悪者説は本当なのでしょうか?
カワウは、水中に潜り、その目でしっかりと獲物を確認しつつ、効率のよい「トロール漁法」を駆使します。漁の名人です。いつも大漁です。
(このため、内水面の漁業者には、ものすごく嫌われています。せっかく放流した鮎の稚魚を根こそぎ食べてしまったりするからです。)
これに対し、コサギなどの鷺さんたちは一本釣りの太公望。浅瀬でじいっと魚が近づいてくるのを待ったり、抜き足差し足忍び足で接近したり。いずれにしても、相手(魚)の動きにじっと目を凝らし、「今だ!」と確信が持てたときにやっとこさ釣り上げるのですから、どうしても効率が悪い。
そこで、鷺さんたちは考えました(多分)。
「そうだ! 鵜さんたちが川の真ん中で魚を追い回してくれれば、魚たちが川岸に避難してくるに違いない。そこを狙って大量捕獲。これぞ追込み漁、グットアイディアだぁ。」
といったところではないでしょうか。それが何より証拠には、コサギさんたち、忙しげに歩き回り、嘴を水の中に激しく突っ込んでいるのです。
「入れ食いだぁ。」
「作戦、大成功‼」
こやんぴには、鷺さんたちがそのように叫んでいるように思われるのでした。
「ちょっと待ってよ、こやんぴ。鷺さんたちが川岸で魚を追い回すので、川の真ん中に魚が避難、それを鵜たちが漁夫の利、とも考えられるんじゃあないの?」
分かります、分かります、そのお気持ち。優雅な白鷺さんが「こずるい」なんて考えたくありませんものね。やはり、悪役はカワウであってほしい、もっともなご意見です。
でも、私の観察するところによると、漁場を先に移動するのは常にカワウです。コサギたち鷺の仲間はそれを追うように移動していきますので、どちらかというと鷺さんたちの方が、カワウさんからメリットを受けているのではないでしょうか。
鷺さんは、浮きが動くのを辛抱強く待っている太公望の雰囲気がありますね。