白鷺という名のサギは、生物の種としては存在しない!?
数日前、カワウとダイサギのバトルをご紹介しましたが、羽を優雅に広げるダイサギをご覧になって、
「あれっ、白鷺でしょ? えっ、白鷺じゃあない? ダイサギ~、何それ?」
とお思いになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それはそうですよね。姫路城は雪より白いその気高さから「白鷺城」とも呼ばれていますし、俳句の季語にも「白鷺」とあります。今は甘いものを控えているので食べられませんが、浦和の甘い和菓子も「白鷺宝」。おいしかったなぁ。また食べたいなぁ。
そうそう、名古屋・金沢間の特急も「しらさぎ」です。昔の車両のヘッドマークには悠然と飛翔する白鷺が描かれていて、名古屋から北陸路へと私たちを颯爽と案内してくれる、そんなイメージでした。
ところが、生物の「種」の名前には「シラサギ」がありません。もっとも、コサギは「シラサギ属」なので、コサギを「あっ、白鷺だ!」と言っても実は正解なのです。
「すると、チュウサギも、ダイサギも、シラサギ属なんじゃないの? 大、中、小をまとめて白鷺でいいじゃないの!」
ごもっともと申し上げたいところなのですが、チュウサギとダイサギは白いのになんと「アオザギ属」、おどろいて蒼くならないでくださいね。
明らかにコサギしかいない状況下では、皆さんが
「あっ、白鷺だ。綺麗だなぁ。」
と感動しているときに、こやんぴのような知ったかぶりをする輩が、せせら笑いつつ近づいてきて、
「いえいえ、あれはコサギと言うんですよ。」
などと話しかけてきたら、
「無礼者! 余は、属名で話しておるのじゃ。下がりおろう。」
と撃退してもまったく問題ございません。
でも、チュウサギ、ダイサギの方は厄介です。そう簡単には、「あっ、チュウサギだ。」「おや、ダイサギだ。」と区別ができないのです。同じ「アオサギ属」なだけに、大きいけれどちょっと小さいチュウサギと、もうちょっと大きいダイサギは、実によく似ています。
さらに、ダイサギには亜種まであって、オオダイサギとチュウダイサギがいるときては、もう頭が痛くなってしまいます。
まあ、アオザギ属とはいうものの、チュウさんもダイさんも白い鷺なんですから、この際、「アマサギ属」のアマサギもひっくるめて「みんな白鷺」でいいんでしょうね。こやんぴのような「知ったか」さんが何と言おうとも。その方がややこしくありません。
チュウさんとダイさんの区別の仕方は、インターネット上にたくさん紹介されていますが、「明快」、「一刀両断」というわけにはまいりません。微妙。
下の写真をご覧ください。白い鳥がいっぱいいますね。さて、これは、何サギでしょうか? ちなみに、稲の生育状況からお分かりのとおり、8月末の光景です。したがって、冬鳥のオオダイサギはおりません。
えっ、みんな白鷺? まあ、そうなんですけどね。
「今までの話しで、答えはすぐに出せるよ。小さいのがコサギ、大きいのがチュウサギかチュウダイサギなんでしょ?」
う~ん、残念! 正解は、小さいのも大きいのも、すべてチュウサギ。
小さいのは2017年生まれの幼羽、要するに、まだ子どもだから小さいだけなのです。コサギは脚指が黄色いので容易に区別することができますが、この写真の中には黄色い脚指の個体、つまりコサギは写っておりません。
このチュウサギさんたちは夏鳥で、冬はフィリピンの別荘で避寒としゃれ込みます。その年に生まれた子供たちは、長く過酷な旅に耐えるためにも、アメリカザリガニなどをしっかりと食べて栄養をつけ、早く大きくならなければなりません。
親鳥が、幼羽に餌をとる訓練をさせるために、アメリカザリガニなどの餌が豊富なこの休耕田に連れてきたのだと思います。
アオサギもやってきました。ダイサギほどの大きさですが、「青」くはないですよね。青系の伝統色をチェックしてみましたが、瓶覗色(かめのぞき)よりも渋いような気がします。